the 30th Anniversary of Mizutani Foundation for Glycoscience
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6 公益財団法人水谷糖質科学振興財団は1992年10月に、糖質科学の振興を目的に設立され、本年30周年を迎えることができました。設立以来、ご指導ご鞭撻を賜りました財団役員、選考委員、顧問、主務官庁ならび関係者の皆様に心より御礼申し上げます。また、当財団の趣旨をご理解いただき、ともに糖質科学振興にご尽力くださいました研究者、研究機関、学会の皆様方に感謝申し上げます。 当財団の目的は、国内外における糖質研究者の独創的な基礎研究に対する研究助成と学術交流促進のための学会の開催支援を行い、糖質科学の振興を通じて人類の福祉に貢献することです。本目的に沿って、設立以来30年間で30カ国 468件の研究プロジェクトに総額約22億2500万円の助成を行ってまいりました。また、国内外の学会の助成に対しては 396件1億500万円の助成を行いました。 毎年世界各国からの応募書類を、選考委員会で精査・評価し、公正かつ厳格な審査を行う作業は大変手間を要することです。改めて選考委員の先生方のご努力に深甚な感謝を申し上げます。 さて近年、パンデミックという未曽有の出来事に私たちは遭遇いたしました。2019年12月から、新型コロナウイルスSARS-CoV-2による感染症(Covid-19)がまん延し、私たちはすでに3年にわたるコロナ禍での日々を過ごしてまいりました。そして、それまでは想像できなかった、外出制限や行動制限、マスク生活などを強いられました。感染が広がった国や地域でロックダウンも行われ、多くの研究機関や大学などでも立入が制限されるなど、研究活動に支障をきたす困難な事態となりました。 人類と感染症との闘いは古くから続いており、我が国の科学技術政策においても重点課題の一つとなってきました。新たな抗生物質やワクチンが開発され、衛生状態の改善が行われても、新型ウイルスや変異ウイルスなど感染症との闘いは今後も続いていくものと考えます。 近年、様々なウイルスの受容体や感染時の細胞内情報伝達分子としての糖鎖の機能が明らかになっています。たとえば、インフルエンザウイルスは宿主細胞表面のシアル酸含有糖鎖分子を標的にして結合します。他にも、エイズウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、そしてコロナウイルスなど様々な病原体の機能も糖鎖が担っていることが明らかになりました。これら感染のメカニズムを糖鎖の面から解明する研究も、感染症の課題解決につながる可能性があると考えます。 当財団は設立趣旨において「複雑で多様な糖鎖構造と機能を有する複合糖質の生体における役割を速やかに解明し、生命現象との関係を明らかにすることが緊急の課題」と述べております。ライフサイエンス分野においては、生命科学を解き明かし、生命とは何かを探求するという基礎科学の振興が、数々の応用研究の土台をなすものであると私どもは考えています。そして、基礎科学の進展が新しい医薬・診断薬や医療材料などの創製につながることも期待しています。 私どもは、糖質科学分野の助成に特化した唯一の財団として、今後も糖質科学振興のためにより有益な財団であるように努力し、微力ながら世界の基礎科学の発展に貢献してまいりたいと考えております。 関係各位皆さまの変わらぬご支援を心よりお願い申し上げます。Ken MizutaniChairperson, the Board of DirectorsMizutani Foundation for GlycoscienceGreetingsご挨拶水谷⋯建 理事長

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